2013年11月8日金曜日

柿田川




伊豆半島の付け根に位置する静岡県駿東郡清水町には、

全長わずか1.2kmの一級河川 柿田川が流れている。

もちろん、日本で一番短い一級河川である。









富士山に降った雨・雪は地下水となり、長い時間をかけて地中を旅していく。

その地下水の一部が、柿田川公園として整備されているこの地で一気に噴出するのだ。







柿田川の湧水量は約100万㎥/日。


湧水量が余りにも多すぎて、源流に程近い場所なのにこの川幅の広さ。


豊富な湧水は清水町とその周辺自治体の上水道用水として活用されているそう。

また、ナショナルトラストの活動家の方がおっしゃるには、

「駿河湾でサクラエビが採れるのはこの川のおかげである」と。


いやいや、たった全長1.2kmの柿田川が

サクラエビの生育を支配するはずがないでしょ?!

と一瞬思うが、

富士の嶺に降った雨雪が元となっているこの豊富な湧水が無ければ、

駿河湾でサクラエビが採れるわけがないと気付く。



この川が無かったらサクラエビは採れない…というわけではないけれど、

柿田川はサクラエビにとっての一つのゆりかごであることは確かなようだ。









柿田川はずっと今のような姿を保ってきたわけではない。





この円形の構造物。

これはこの地に以前あった工場の井戸の跡だそう。




この地にはほんの数十年前まで、たくさんの工場がひしめいていたという。

言われてみれば確かに、

綺麗で潤沢な水が得られるこの地は工場を展開するのにうってつけの場所だ。




工場が林立し、川床には大量のヘドロと排水…。

現状を見ていると到底想像がつかない。






その光景を憂いた方々がトラスト運動を始め、

少しずつ柿田川の沿岸を買収していったのだ。

この活動を始めたのが1980年代。

高度経済成長期の反動とも言える「環境権」が漸く市民権を得た当時でも

清水町と工場を管理する会社はこの運動を苦々しく思っていたらしい。

活動家の方は当時を、

「清水町からは何度も(活動を)やめろって言われたんだ」と言って振り返る。






公園から国道1号線を挟んで反対側にあるショッピングセンター(サントムーン柿田川)。
ここには昔、大東紡織の工場があったという。


時は流れて2013年。

柿田川の周りからは工場が姿を消し、柿田川は以前の姿を取り戻した。

ナショナルトラスト運動によって買い上げられた土地の横には、

清水町が造成した柿田川公園がある。

『未来へ残そう柿田川の自然 清水町』 時代は変わった。



現状をどう見ているのか。活動家の方は息巻いた。

「(清水町に対して)あの時は反対したのに、
今では町の見どころですとか言ってるんだ」

「俺らは毎朝清掃してるのに、
彼らはシンボルと言うだけで清掃などは何一つやらない」

まあ、こう言いたくなる気持ちも分かる。







柿田川のトラスト運動を進めた方々に敬意を払うとともに、

紆余曲折を経て以前の姿に戻った柿田川が、

今後も訪れる人の心を潤すことを切に願う。


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